長「前回までのあらすじ。女から道案内という名の逆ナンを受けていた燭台切は、すぐあしらえるにも関わらず俺に当てつけるように長々と話し込んで強制放置プレイをかましてきた。いいようにされるのもムカつくので、その場を回れ右した俺は何故か見知らぬ余所の燭台切と喫茶店で茶をしばいていた!」
📦「君は頼まないのかい?」
長「見知らぬ燭台切は爽やかな笑顔で語りかけてくる。何をやっても胡散臭いうちの近侍とは大違いだ」
📦「その地の文風ナレなに? 趣味なの?」
長「断じて趣味ではないが大宇宙の意志によりこうしている」
📦「大宇宙の意志なら仕方ないね」
長「話のわかるやつである」
📦「強引に引っ張ってきてごめんね。でも泣きそうにしてる君を放ってはおけなくて」
長「その台詞を素面で言っていたら正気を疑うが」
📦「大宇宙との交信って正気でできるんだ……」
長「お前が真性のお人好しかキ●ガイかはさておき、俺には別に泣きたいことなどない」
📦「ならいいんだ僕の勘違い」
長「頼んでもいいなら白玉あんみつ」
📦「ここのあんみつは美味しいよ。僕たち気が合いそうだね!」
長「粒あん」
📦「ソウルメイトよ」
長「俺と見知らぬ燭台切は熱い握手を交わし合った」
①「一方その頃の僕はナンパされてホイホイ付いていく長谷部くんを目撃して無実の壁にヒビを入れていた」
①「はーもう駄目だな長谷部くんは。まだ顕現して数ヶ月の新刃くんだからって知らない男に付いていくなんて警戒心無さすぎやしないかい? ちょっと目を離した隙にこれだよ、本当に僕がいないとダメなんだからなあふふふ」
👧「ママーあのお兄ちゃん握力すっごいよー」
👩🦰「あれが嫉妬に狂う男の顔よ」
段「燭台切との待ち合わせに向かう途中で不審刃物と出くわしてしまった」
①「それは穏やかじゃないね」
段「自覚がない変質者ほど厄介な者はないな」
①「実は君たちの待ち合わせ場所があの喫茶店だったり」
段「大変遺憾だが想像の通りだ」
①「協力を要請したい」
段「パフェ五杯で手を打とう」
👩💼「いらっしゃいませ二名様でよろしかったですか」
①「はい。あと申し訳ありませんが僕冷え性なのでトイレに近い席だと嬉しいんですけど」
👩💼「かしこまりました。ちょうど空いておりますのでどうぞ」
段「意外に繊細な身体だな」
①「前鶴さんに付き合ってかき氷四杯食べたけど何ともなかったね」
①「相手からは死角、長谷部くんの顔確認オーケー! ンン、絶好のポジショニングだねえ!」
段「いよいよ犯罪の片棒を担がされている感がやばい」
📦「? なんか寒いな。ここ空調効き過ぎじゃない?」
長「そうか? 別になんともッ……!?」
①「ニコォ」
📦「うわ君顔真っ青だよ、大丈夫?」
長「ももも問題ない。いや全くこの店は寒いな次あたり熱いコーヒーを頼もうウン」
📦「……やっぱり君のところの僕が気になって仕方ないんじゃないかい?」
長「エ”ッ」
📦「燭台切光忠とは恋仲なんだろう?」
長「な、何故それを」
📦「ヒント:大宇宙の意志」
長「なるほど自白だった」
📦「上手くいってないのかい、なんて訊くのは愚問かな」
長「……あいつは初めから俺に対して意地が悪い。試すような真似ばかりするから反抗してみせたまでだ」
📦「意地悪? どんな?」
長「俺の前でわざわざ通りすがりの女に甘い言葉を掛けたり、俺が他の男と仲良くしていても敢えて静観したり」
①「意地悪じゃなくて愛の駆け引きだよ」
段「実際やってることはストーカーだけどな」
長「あいつは俺をからかって遊ぶのが生き甲斐らしくてな。そんなつまらん趣味にいちいち付き合っていたのでは身体が保たん」
📦「保たなくなった結果泣きそうになってたんだ?」
長「ッだから、それは誤解だと」
📦「たとえ誤解だとしても、僕の目から見た君はとても辛そうにしていた。君を慰めたかった。声を掛けずにはいられなかった。少しくらい素直になってもいいんじゃないかな、ここに例の彼はいない」
①「ここにいるよ」
段「俺も身体(腹筋)が保たなくなってきた」
長「さっきのが俺の素直な気持ちだ」
📦「もう、強情だなあ」
長「見ず知らずの刀に心配される筋合いは無い」
📦「見ず知らずじゃなくなればいいのかい?」
長「ん?」
①「ン?」
段(流れ変わったな)
📦「僕は君の力になりたい。そのために君のことをもっと知りたい。だから君も、僕の気持ちを受け入れてくれないかい」※例のBGM
長「ふぇっ!?」
①「ンンン!?!?!?」
段「両手を握って正面からみつめる攻撃。へしきりはせべにはこうかばつぐんだ!」
📦「僕は君の燭台切光忠の代わりにはなれない。でも彼以上に君に優しくする自信は有る。あまりひとりで思い詰めるのは良くないよ」
長「馬鹿おまっ手を放せ! 死ぬぞ!?」
📦「君が頷いてくれるなら放すよ」
長「あああああ店内の温度がさらに冷え込んでいく!」
📦「本当だ、こんなに冷えきって……大丈夫だよ、そんなに怯えなくても今日から僕が君の味方になるからね」
長「お前の背中と神経は超合金でできてるのか!?」
📦「逞しい背中だと言われたことは有るけど」
①「わあ本当。いくら踏みつけられてもピンピンしてそうな逞しさだねえ」
📦「ヒェッ!」
長「あかん終わった」
📦「ちょっ、君いきなりひとの背中を揉みしだくとはどういうつもりだい!? セクハラ!?」
①「ごめんね、あまりにも頼りがいの有る背中だったからつい♡」
長「しょ、燭台切……」
①「やあ長谷部くん。僕が道を尋ねられてる間にひとりでどっか行っちゃうなんて酷いなあ。せめて連絡の一つでも入れてくれれば良かったのに」
長「俺の動向をしっかり目で追ってたくせに白々しい……」
①「でも探さない方が良かったかなあ? 僕がいない間にすごぉく優しい彼氏ができたみたいだし?」
📦「その口ぶり、君がこの子の彼氏だね」
①「え? もう長谷部くんの彼氏は君になったんじゃないのかい?」
📦「本気で言ってるのかい? 同じ燭台切光忠として恥ずかしいな。好きな子を泣かせるのはどうかと思うよ」
①「お生憎様。これが僕と長谷部くんなりのコミュニケーションなんだよ」
📦「一方通行すぎてコミュニケーションとして成立してないじゃないか。君がそんなんだから長谷部くんは」
①「今日会ったばかりの君に一体僕たちと何がわかると……ん? いや君なんか見覚えが有るぞ」
📦「え?」
①「僕が会ったことがあるとすれば演練……でも練度からして普段当たらない本丸……」
📦「演練……燭台切……! ちょ、ちょっと待った」
①「あッ! そうだ君、まだ正式に付き合ったわけでもないのに長谷部くんとべろちゅーかましておいて親友と言い張り、その長谷部くんから乳首でピーナッツ割るよう要求された伝説の燭台切じゃないか!」
📦「」
長「乳首……? ピーナッツ……?」
📦「表に出ろやオラァ!」
①「望むところだよピーナッツ台切ィ!」
長「なあそこの俺、乳首でピーナッツっていったい」
段「落ち込んでいる一振りの刀を支えた伝説の妙技だ」
長「乳首で……ピーナッツが……?」
🧻「えーテステス、本日は晴天なり。僕は通りすがりの実況を頼まれた燭台切です」
段「好きなやつから友情の証としてオナホ贈られた顔をしているので連れてきました。解説は主好みの段ボールを仕入れにきたへし切長谷部でお送りします。こちらは優勝賞品のへし切長谷部です」
長「全く状況が掴めていない」
🧻「安心して僕もさっぱり解ってないから。片栗粉買いに来ただけだからね僕」
段「敗北した燭台切の今晩のおかずは片栗粉Xになります。己の矜持とち●ぽの安寧を賭けて全力で勝負に臨まれることを期待します」
🧻「僕のアイコンが何でトイレロールなのか気になってたんだけど、まさかこれ片栗粉えっく」
段「さあゴングが鳴った! 今宵デンプンと戯れるのは一体どちらか!?」
🧻「早くも段ボールの方の燭台切光忠が沈んでいますね」
段「いや早すぎるだろ。せめて一秒くらいは保たせろ尺が余る」
①「発足から一年も経ってない本丸の刀に負けるはずがないだろう」
🧻「流石は純粋な戦闘力だけなら本丸軸ナンバー1」
段「よし燭台切、力で駄目なら口で攻めろ精神攻撃だ!」
📦「ええなにそれカッコ悪い……」
段「負けたら公開ピーナッツだぞ」
📦「僕は長谷部くんと付き合う前からべろちゅーの承諾貰ったけど、君が付き合う前に同じことやらかしたら舌噛んで逃げられたんだって?」
①「ゲフォ」
🧻「土人形本丸の燭台切に20ダメージ入りました!」
長「底辺争いすぎる」
📦「実は僕たち一目惚れした同士だし、本丸始まる前から主公認の仲だし、初夜も合意の上で進めたし、二回目のお誘いは長谷部くんからだったからねえ!」
①「ガハァッ!」
🧻「おっと長年本丸に長谷部くんが来ず初夜も相手の意志がないまま進め、未だそっち方面のお誘いが中々来ない土人形側瀕死!」
📦「あと日本号さん抜きで黒田の回想発生した」
①「グッなんたる……無様な……!」
🧻「あの歴戦の土人形燭台切が膝を突いたぁ!」
段「未だに直球で黒田回想に触れてるのは俺と燭台切の話だけだからな。文章量からしてもメタで攻められる弾数が違う」
長「こいつらは一体何と戦ってるんだ」
①「ハァ、はぁ……くそっ」
📦「もうボロボロじゃないか、これ以上の戦いは控えた方が良い」
長「あいつ一太刀も入れられてないのに何で重傷になってるんだ」
①「は、……それでも、絶対に負けられない戦いがあるんだよ……!」
長「格好良く口端の血を拭うな。何が原因で出たんだそれは」
📦「君がそうまでして立ち上がろうとするのは、己の矜持がためか?」
①「………」
📦「いやさっき店で自分から姿を現したとき、既に君の計画は破綻していたはずだ。今更体裁を取り繕ったところで遅い。それでも君は勝利に固執する。何故だ?」
①「男児が勝利を求めるのに理由が要るとでも?」
📦「そこは同じ燭台切光忠として解らなくもないよ。でも君は経験豊富な上に冷静すぎるほど冷静な刀だ。既に勝ち目が無いことは解っているんだろう? 全力で臨んだ勝負の結果に文句を言うのはカッコ悪いだけだからね。本来だったら君はもう降参を認めているはずなんだ。そう、本来だったら」
①「まるで、ひとを正気じゃないみたいに」
📦「正気のつもりかい?」
①「いや君の言う通り僕はとうに狂っている。ここで敗北を認めて自分の一番大切なものを失うことだけは耐えられない。保身や矜持なんて彼の前には塵芥同然だ。好意も憎悪も怨嗟も羞恥も何もかも長谷部くんの感情全ては僕のものだ! 優しく甘やかすだけなんて物足りないねえ!」
📦「……とんだ男に捕まったねえ、彼は」
①「一度手に入れたら絶対に離さないのは君だってそうだろう?」
📦「まあね。第一それが僕らの長谷部くんの望みでもあるからね」
①「そうそう、結局は割れ鍋に綴じ蓋なんだよねえ。だろう、長谷部くん」
長「ん……」
①「僕より優しくて甘やかしてくれる別の燭台切が良いかい?」
長「良いかもしれないが、選ぶ気はない」
①「そっか、まあ選ばせる気もないけどね」
長「お前は本当に意地悪だ」
①「ごめんね、でも優しくするときはちゃんと優しくするから」
長「これからはもうちょっと頻度増やせ」
①「考えておくよ、僕の長谷部くん」
📦「勝負は引き分けってことでいいのかな」
段「いいんじゃないか? どうせ結果は解りきってたしな」
📦「じゃあ公開ピーナッツもデンプンとの営みもしなくていいんだね」
段「いや、そいつはどうかなあ?」
📦「不穏に満ちた返しはやめてくれよ」
段「向こうの燭台切を煽るためとはいえ、お前あのツンデレ部に糖分過多な台詞の洪水浴びせてただろ。手まで握りやがって、まーあざといあざとい」
📦「え? 友達になって真剣に君の相談に乗りたいって言っていたつもりだったんだけど」
段「……」
📦「長谷部くん顔が阿修羅のそれだよ」
段「却下! 本日の燭台切光忠さんは合体禁止です! へし切長谷部ストリップショーオンステージを前に射精大会の刑に処します! 踊り子さんには手を触れないで下さい!」
📦「何で!?!?!?」
段「お前なあお人好しも大概にしろよ! クソッまさか初期にしたやり取りを再び繰り返すとは誤算!」
📦「解ってると思うけど下心なんて全く無かったからね!?」
段「下心なしで好きでもない男の手をあんな風に握れるのか! お前の両手の貞操観念はどうなってるんだ!」
📦「握手くらいなら本丸の仲間にもするだろう!?」
段「一方的に握っただけだろうが! もはやあれは実質セックスだぞ!」
📦「長谷部くん、ひょっとしてやきも」
段「あーーーー妬いてるとも! やきもちツインベルだとも! 性分と解っていても好いた男が俺と同じ顔した刀に優しくしてるの見て良い気分になれるわけないだろうが! 煽れってけしかけたのは俺だが、理屈では納得できても本能はレッドカードを掲げてます!」
📦「長谷部くん」
段「何だ」
📦「合体禁止は今日までだよね?」
段「ああ」
📦「……日付が変わったらしてもいいよね?」
段「……そうなるな」
📦「ストリップショーいつから?」
段「23:50開幕予定」
📦「我慢する気ない長谷部くん可愛いなあ、好きだよ」
段「ふん、俺もだぞ伊達男」
🧻「それぞれに本心や鬱屈を打ち明け、愛情を深めるこいびとたちを見送り僕は思うのだった。
何で僕は一振りで余所の痴話喧嘩に巻き込まれてるんだろう……
空虚な胸に夕焼けの茜色が妙に染み渡る。可哀想な燭台切光忠選手権、今ならぶっちぎりで優勝できる……そんな気がしたんだ……」
大宇宙の意志を引き継ぐのは僕だEND