吸血鬼パロ番外篇 - 2/2

水も滴る吸血鬼

 

「今日は何の話が聞きたい?」

 寝台に腰掛けた男がお決まりの文句を口にする。夜にのみ現れる客人は話し上手で、子供の頃の俺は彼の披露する冒険譚にいつも夢中だった。

 昨日は火竜とその生贄になった少女の話をされた。世間では国を滅ぼす悪神と囁かれていた竜だが、実際はヒトへの興味などまるで無い孤高の生き物だった。生贄の少女はあっさりと解放され、自由を手にする。しかし、行く当ても無い彼女が頼れるのは竜の神様だけだった。
 彼女は神様相手だろうと物怖じせず、その巨体に寄り添い離れようとしなかった。竜は何度も少女を人里へと戻したが、そのたびに少女は竜の元へ帰ってきた。草藪を突っ切り、野生の獣に追われ、擦り傷だらけになってなお彼女は竜に笑いかける。これにはとうとう竜の方が根負けして、一人と一匹は共に過ごすようになった。

 彼らの絆は何十年と続き、竜は生まれて初めて友の死に立ち会うことになった。ヒトの仔が最期に語ったのは、友の背から眺めた大空と海原の記憶だった。世界があれほど美しいことを、少女はこの友との出会いで初めて知ったのである。竜もまた少女との交流で様々なことを知った。肌を撫でられる喜びと、静寂を乱される煩わしさと、思い出を共有する楽しさと、大切な者と別れる悲しみ、これらは皆死に行く友が教えてくれたものだった。

 ふたりの物語は少女の死で区切りを迎えるが、終わりではない。彼女が最期に遺した言葉は竜の中で生き続けている。居場所を失ったヒトの仔がまた一人森に迷い込んで来た。竜の神様は新たな友を乗せて再び空を駆る。それから何百年と経ち、国の興亡が繰り返された後の世も、竜のかみさまと人のこどもが紡いだ友情は絶えず語り継がれているらしい。

 結末を聞いた幼い俺は拍手を惜しまなかった。男の語るお伽噺は純然たるハッピーエンドこそ少ないが、後味の悪さを覚えたことは一度もない。想像の余地が残された幕引きは、どれも明るい未来を感じさせるものばかりだった。竜はきっと今も人々を温かく見守り続けているに違いない。

 おそらくは今日聞かせてくれる話も、少し切ないけれど最後には笑って終われる物語なのだろう。俺よりずっと長い時間を生きている男に求めた昔話は――

「ニンフの話が聞きたい」
 古来より湖や川に関する伝説は枚挙に暇が無い。水はヒトの生活に密接な関わりが有る。不可思議な逸話が生まれるのも必然と言うべきだが、男から泉に棲む精霊の話をされたことは無かった。エルフや竜に会っておいて、まさかニンフと面識が無いなんてことは有るまい。排他的な社会に生きる前者と違い、精霊は他種族との交流に意欲的だ。顔の広いこの男ならさぞ珍妙な体験談を語ってくれるだろう。

 期待を向ける俺に対し、何故だか客人の反応は芳しくない。明らかに困っている。いつも寛容かつ朗らかに笑う男には珍しい表情だった。

「ニンフ、ニンフかあ……人伝の話になってしまうけれど、それでもいいかい」
「構わないが……なんだ、燭台切はニンフに会ったことが無いのか」
「実はそうなんだ。中々どうして縁が無いんだよねえ」

 燭台切は吸血鬼だ。吸血鬼と精霊の仲が悪いとは聞かないが、いつの世も力の強すぎる者は敬遠される。荒事にはめっぽう弱い精霊にとって、燭台切は畏怖の対象なのかもしれない。

 伝聞での語り口になることを男は危惧していたが、こちらとしては要らぬ心配である。奇抜な題材や実体験に頼らずとも燭台切の話術は巧みであるし、何より彼の声はとても心地良い。どんなに寝苦しい夜でも、燭台切の優しい声を聞くだけで安らかな眠りが確約された。
 吸血鬼というより魔法使いだな、とたまに思う。気付けば訪れていた睡魔に身を委ね、瞼を閉じた。
 意識を手放す寸前に大きな掌が髪を梳く。その感触をいつまでも味わっていたいのに、幼い俺は辛抱が利かなくて、すぐに夢の世界へと旅立ってしまうのだった。

 時が流れること十五年、俺はヒトに仇なす者を斬る退魔師になっていた。

 愛刀さえ有れば大概の相手に遅れは取らない。今も大量発生した凶悪なハーピーの群れを蹴散らしてきたばかりである。ここまでの実力を身に付けるには相応の時間や経験を必要とした。武器を取る切っ掛けさえなければ、亡父の後を継ぎ俺は礼拝堂に立つ日々を送っていたことだろう。

 思えば、あの男のせいで随分と人生を変えられてしまったものだ。先月までは幾度殺しても飽き足りぬと憎悪を漲らせていたのに、真実を知った今ではすっかり絆されてしまっている。出会った当初から惹かれていたとはいえ、いくら何でもちょろすぎやしないだろうか。

 こうして俺が悶々と頭を悩ませているというのに、元凶の吸血鬼はここ四日ほど行方を眩ましている。
 原因は先日の依頼で起きた諍いにあった。敵の攻撃から燭台切を庇い、俺は左腕を軽く負傷した。処置せずとも数日も放っておけば勝手に治る怪我だ。しかし、燭台切はどうも俺の態度が気にくわなかったらしい。

「どうして僕を庇ったんだい。たとえ一撃貰ったとしても夜になれば秒で治る傷だったはずだ」
「身体が勝手に動いたんだ。大体、昼間に関しては俺よりお前の方がずっとひ弱だろう。朝から絶えず陽に晒されているだけでも負担だろうに、さらに怪我などしたら夜の加護が有ってもカバーできなくなるぞ」
「僕の我が儘で君の仕事に随伴させてもらっているんだ。傷つくことくらい覚悟の上だとも。それなのに僕のせいで君が怪我するなんて本末転倒もいいところじゃないか」
「ふん、半人前を支えるのも先輩の仕事のうちだ。どうせ夜はまだお前に敵わないんだ、日が出ている間くらい格好つけさせろ」
「長谷部くんはそんなことしなくても十分格好いいよ」
「解ってるならいい」

 ここまでは宗三にも「惚気なら帰ってやって下さい」と言われる範囲だった。帰宅後はそれはもう盛り上がったとも。不本意そうに、それでいて俺の血を舐めて感じ入る燭台切の色気は尋常ではなかった。思い返すと今でも腹の奥が疼く。止めよう、アレの居ない現状でこの回想は身体に毒だ。

 問題が生じたのは翌日以降のことである。後朝の気怠さに抗えず、俺は愚かにも午後になって宗三の下を訪れた。腰を押さえる俺に待っていたのは、依頼拒否という非情な現実だった。

「はああ!? 俺に受けさせる依頼が無いとはどういうことだ桃色もやし!」
「言葉の通りですよアナル弱部。貴方の彼氏に一週間ほど依頼は控えるよう言われてましてねえ、人外の王を敵に回すほど僕も馬鹿ではないので」
「何が人外の王だ! 昼間のあいつなんてデコピンで体力の三分の一を削れるくらいには貧弱だぞ! 猛禽類のお前なら一突きで九割は堅いだろ!」
「僕についてたストーカーをデコピン一発で気絶させた男の基準は当てになりません。いいじゃないですか、一週間くらい彼氏にどろっどろに甘やかしてもらえば」
「……いや駄目だ。そんな生活堕落する、俺はあいつと対等でいたい」
「思いきり考え込んでましたよね。満更でもない顔してましたよね。知人にメス顔晒さないで下さい、視覚テロも良いところです」

 その後、一時間ほど粘ってみたものの薄情者の友人は取り付く島も無かった。
 日も途方も暮れて渋々家に帰れば、実に良い笑顔で俺を出迎える元宿敵の吸血鬼がいる。喧嘩っ早い俺と、我の強い燭台切との間でそれから何が起きたかは想像に難くないだろう。とりあえずダイニングテーブル(チョイス:歌仙)は尊い犠牲になった。

 あいつが俺を心配する気持ちは解らんでもないが、自分の限界は自分が一番よく知っている。あれしきの怪我に一週間も安静を強いられるのは納得いかないし、宗三まで懐柔して仕事を取り上げようとは過保護にも程が有る。

 喧々囂々と激しい口論を繰り広げ、決着もつかぬままその晩は自室に閉じこもった。燭台切が寝静まった早朝を見計らい、俺は宗三ではない別の窓口から依頼を引っ張ってきた。飛び入りということもあり、貰えたのは日帰りでこなせる簡単な仕事だけだったが、燭台切への意趣返しには十分である。
 稼いだ小銭をあいつの前でばらまき、ここぞとばかりに勝ち誇った顔をしてやった。返ってきたのは何の感情も籠められていない、冷え切った相貌だけだった。

「そう」

 首筋に刃物を当てられたような心地だった。身を竦める俺の横を黒の外套が過ぎる。熱を失った黄金の瞳に俺は映っておらず、あの男はこちらを一顧だにせず扉の向こうへと消えた。あれから燭台切とは一度も顔を合わせていない。

 流石に四日も音沙汰が無ければ心配もする。のぼせていた頭だってとうに冷えた。俺も大人気なかった、謝罪ならいくらでもするからまた抱きしめてほしい。そう伝えることも本人がいなければ叶わないのだから、俺にはただ待ち続けることしかできなかった。

 四日も触れていないということは、燭台切もこの四日、食事をできていないことになる。あの男が今更俺以外の血を飲めるとは思わない。自惚れと断ずるには、閨で少々口説かれすぎた。

「くそ、この夜な夜な火照る身体をどうしてくれる」
 情を交わしてから二日と空けず求め合っていた生活が祟っている。
 自分で慰めようにも、指では長さも大きさも足りない。あの雄々しい肉棹に深々と貫かれ、腹の奥を蹂躙されて初めてこの身体は満足する。淫乱と耳を嬲る声までもが恋しくて堪らない。口寂しくなって己の唇をなぞった。ああ、あいつは今どこで何をしているのだろう。

「熟れた人妻の気配!」
 茂みから突然何かが転がり出てくる。俺の足元で止まった影は存外小柄で、一見して少年のような容姿をしていた。もっとも隊商が通るのに護衛を雇うような道で、子供が一人うろついているはずがない。只者でないことは確かだ、色んな意味で。

「……!? 馬鹿なッ……! 旦那さんの出張で昂ぶる身体を持て余している人妻の気配がしたはずなのに、股座に俺と同じものがぶら下がっているだと……!」
「初対面の相手の足元に陣取って第一声がそれか、さては貴様大物だな?」
「こんなにも可愛らしい男の子の首に刃物突きつけるお兄さんには敵いません。ちょっと止めて俺には未読の人妻温泉モノ小説が十冊いるんだ!」
「故郷に残してきた家族みたいな体で言うな」
 不審者まるだしの童がようやく立ち上がる。衣服についた土埃を叩いて、少年はこれ見よがしに大げさな溜息を吐いた。

「はあ残念……せっかく久々に人妻かお菓子にありつけると思ったのに」
「金平糖で良ければくれてやるが」
「本当!? ありがとうおじさん!」
「お兄さんだ」
 常備している金平糖を童の掌に四、五個ほど載せてやる。甘味を舌で転がし、美味しいと頬を緩ませる姿は少年らしい愛嬌が感じられた。この笑顔を見てしまうと、出会った矢先に人の股間を注視してきた変態と同一人物とは到底思えない。

「あー美味しかったあ! ねえねえ、人妻モドキお兄さんは今暇?」
「斬新すぎる枕詞はやめろ。仕事は終わったから特に急いではいないな」
「本当? じゃあお菓子のお礼したいから、ちょっとウチに寄っていってよ!」
 少年の誘いに俺は一も二も無く同意した。

 貰えるものを断る道理は無いし、この問題児の保護者に会えるなら願ったり叶ったりである。お宅はお子さんにどういう教育をなさってるんですか? 余所の子とはいえ全力で物申したい。今なら語尾にザマスをつける人種の気持ちが解るような気がした。

 案内されて湖の畔まで足を運ぶ。水鏡に映った針葉樹が風に揺れていた。歪んだ虚像の遙か上を雁の集団が渡る。湖面が凪ぐと一帯が柑子色に染まって、突き出した岩肌の後ろに伸びる影法師が途端に色濃く見えた。

「いち兄、お客さん連れて来たよーっ」

 少年の呼び掛けに応じてか、風も無いのに波が立ち始める。水流は徐々に激しくなり、やがて小さな渦となって平坦な湖に凹凸を生み出した。
 目映い光が視界を焼く。思わず目を伏せた。少しして瞼をおそるおそる開けると、水面に男が一人立っていた。清らかな水の化身とも言うべき風貌は、この世の穢れなど相知らぬとばかりに整っている。

「初めまして、私は一期一振と申します。そこにいる弟の包丁藤四郎共々、どうかお見知りおき願います」
「あ、ああ……初めまして、俺は長谷部国重という」
 想像以上に真っ当な挨拶をされて些か拍子抜けした。この堂々たる振る舞いに紳士然とした細身の男が、人妻を連呼するマセガキの兄であっていいのだろうか。

「僕の知り合いによると、ニンフは結構な個性派が多くてね。道行く人に悪戯を仕掛けたり、変わった要求をしてきたりするんだって」

 幼き日に男から聞いた精霊の習性を思い返す。あれを個性派で片付けていいのかはともかく、包丁がニンフだとすれば色々と納得がいった。
 しかしニンフを名乗りながら一期に包丁、いずれも男である。まあ神や妖精の類だから性別の観念も希薄なのだろう。実際に相対してみると、男か女かなど考えるのも馬鹿らしいくらい彼らの姿は秀でていた。

「包丁が飛び出していったからには未亡人か訳ありの人妻かと思いましたが、まさかの男性で驚きましたぞ」
「そうなんだよ、いち兄。濃厚な人妻スメルを嗅ぎつけたと思ったのに、穴の数を減らして棒を増やしたとんだ紛い物に捕まっちゃったんだよお」
「こら、口を慎みなさい包丁。年齢身長経歴種族問わず人妻は人妻です。少し下半身の形が違うからといってスキュラやハーピーの人妻を人妻と認めないなんてことが有りますか? 違うだろう、我々が好ましく思うのは人妻という概念そのもの、その有り様こそが美ではなかったのか」
「ッ! そうだねいち兄、俺が間違ってたよ……!」

 あ、こいつら間違いなく兄弟だ。顔面偏差値と脳の容量が反比例してるところまで含めて血を分けた兄弟だわ。

「私はふくよかな女子にしか興味が有りませんが、長谷部殿は己が人妻であることを誇ってもよろしいと思いますぞ」
「ごめんね長谷部。ついてるカノジョがいるんだから、ついてる奥さんがいたって良いよね!」
「兄弟揃って親指を立てるな、折るぞ」

 鯉口を切って刀身を僅かに晒す。桃色兄弟は一糸乱れぬ動きで同時に拳を下げた。仲良しかよ。

「こちらの奥さん、俺に金平糖くれたんだ。だからお礼したいんだけど、いち兄何か良いのないかな?」
「はは、任せてくれ包丁。寂しがっている人妻に渡すものと来たら、旦那をその気にさせるスケベな薬かひとりでに動く可愛いオモチャと相場が決まっているだろう」
「妖しい精と書いて妖精と読む理由が解りすぎる提案はやめろ。何も要らんから帰っていいか?」
「それはいけません。世話になっておきながら碌に礼もできぬとあっては粟田口の恥。スケベな土産が要らぬならスケベな相談はいかがでございますか」
「何故スケベ限定なんだ。ニンフとは房事が得意な種族なのか」
「単に我ら兄弟の得意分野だからです。私もショタ以外の性癖ならば大概はカバーしております故、竜姦獣姦視姦青姦ありとあらゆるシチュにお応えできますぞ」
「どうでもいいがショタが範囲外な理由は」
「弟を持つ身として、成熟していない少年の身体に欲情するような真似はできませぬ。血の繋がった姉妹を持つ男が姉や妹モノで抜けない理由と同様です。いわば紳士の振る舞いですな」
 俺の知っている紳士とだいぶ違う。

 普段なら知性を炉に溶かしてローションで固め直したような申し出など即座に断っていたことだろう。そう普段なら。正直俺はかなり追い詰められていた。

 考えてみれば燭台切と喧嘩別れするなど今回が初めてなのである。小言こそ毎日のように聞いたが、十六年もの付き合いの中で、燭台切が俺に対して怒りを露わにしたことは一度も無い。足を聖銀で刺されようが、裏切り者と罵られようが、男はいつでも俺に優しかった。その優しさにあぐらを掻いていなかった、とは言えない。

「ある男を怒らせてしまった」
 藁にも縋る思いで湖の精霊に問う。ヒトより遙か長き時を生きる男に、ヒトでは及ばぬ知恵や手管を期待して俺は遂に助力を乞うた。

「そいつは吸血鬼なんだが、ここしばらくは俺の血しか吸っていない。別れてから既に四日も経過している。丈夫な方だしそう簡単に斃れるとは思わないが、最近は日中でも活動していたから身体も弱まっているはずだ。だから、そろそろ……
「なるほど仲直りの吸血スケベをしたいと」
「身も蓋も無いことを言えばそうだが、他に言い方は無かったのか」
「どんなに取り繕ったところで最終的には合体するのですから構わんでしょう。なるほど吸血鬼ですか。そこまで執着されているのであれば、服をはだけた状態で寝台に横たわり指先を軽く切って流れた血を扇情的に舐れば一発ですな。これで確実に旦那さんを釣れますよ」
「野生種の捕獲方法か何かか?」
「シーツが汚れるのが嫌というのであれば浴室でするのも有りですが、吸血鬼だと誘いにくいかもしれませぬなあ」
「浴室……ああ、流れ水か。あの規格外が今更流水を怖がるとも思えんが」
「いやいや長谷部殿。強力な魔物であればあるほど意外な弱点に縛られていることが多いものです。実際浴室でまぐわったことがございますか? 有りますまい。全力を出せぬ状態で戦場に臨むなど言語道断。吸血鬼にとって日中と風呂場での情交は、すぐそこに人がいるから声を抑えなければいけない省エネセックスと大差無いのです」

 吸血鬼でも何でもない性霊は力強く断言した。
 論理展開はともかく、一期の主張には頷くべき部分も有る。何しろ燭台切はかなりの格好つけだ。行為の後にあれこれと世話を焼きたがるし、隙さえ有れば場所時間も問わず接触を図るくせに、これまで風呂を共にしたことは無い。もしその理由が、流水で弱まっている自分を見られたくないということであれば辻褄が合う。

 閨事に不満が有るわけではないが、こればかりは経験値の差が明らかで、俺は一方的に翻弄され続けて来た。この仮説が正しければ、あの夜の帝王面した男から主導権を奪えるのではないか。
 いやアレを誘い込むなら、浴室なんて忌避されそうな場所を選ぶべきではない。俺は燭台切と仲直りしたいだけなのだ。

「良い目をしていますな。少しはお力になれましたか」
「ああ、感謝する一期一振」
「礼には及びません。旦那さんと無事にドスケベセックスをできることをお祈り申し上げます」
 そう言って、精霊の兄弟は人差し指と中指の間に親指を差し入れた。俺も彼らの最低の敬礼に倣い、湖畔を後にする。
 このときの俺は知らなかった。性癖マイスター面で熱弁を振るっていた一期一振が、ここ百年ほどは異性と話すらしていない、童貞中の童貞であることを。

 自宅の門をくぐる頃には日も完全に落ちきっていた。
 夜目から得られる情報だけで廊下を進む。真っ先に足を踏み入れたのは脱衣所だった。手袋とストラを外し、ケープを取って籠に入れる。そして肌身離さず持っていた短剣を鞘から抜いた。もっぱら退魔を目的とした道具だが、人の肌でも切れないことはない。
 刃先を指の腹に押し当てれば、赤い雫がぷくりと膨れ上がった。次第に垂れて手首に達しそうになった液体を舌で舐め取る。苦い。これを美味しいと飲み干す男の気持ちは解らないが、アレが俺を食らうときを思い出して、その動きを真似た。

「ん、んぅ……
 掌から鉄の味が消えるのはあっと言う間だった。これぐらいの匂いでは燭台切も誘われてはこないだろう。自ら傷口に吸いつき、新たに流れた紅色を舌の上で転がした。もう指の股まで己の唾液で濡れている。

「しょくらいきりぃ……
 肌を重ねるたび指の一本一本まで丹念に愛でられた。再現など容易なぐらい身体に染みついているのに、どれだけ記憶をなぞっても同じ快感は得られない。そのくせ体内の熱は燻る一方で、頭がおかしくなりそうだった。
 血を吸い出しながら、空いた手を下着の中に滑り込ませる。兆し始めた性器を掴み、無我夢中で自身を慰めた。

「はあ、アッ……! たりない、いやだ、腹のなか、ぐっちゃぐちゃにかきまわしてくれないとやだァ……!」
 前から後ろへ指を滑らせ、未だ解れていない窄まりを突く。先走りを塗りたくり、第二関節まで一気に埋めた。満たされたのは一瞬だけ、もっと太くて硬いものに慣れた内壁はやはり指ごときでは不満だと、切なげに訴えてくる。
 足がふらついて壁を支えにするも、力の抜けた身体はずるずると滑り落ちていく。そのまま床に座り込もうとして、誰かに腰を掴まれた。

「ふぇ……ンむッ!?」
 突然視界が覆われ、唇に吸いつかれる。生温い肉が咥内を荒し、歯列をなぞるたびに全身が痺れた。そそり立った肉芯を遠慮無しに扱かれ、瞼の裏が明滅する。
 お預けを喰らっていた身体が性急な刺激に耐えられるはずもない。迫り上がった欲望が弾け、先端を包む手の中に白濁を撒き散らした。俄に青臭い香りが漂う。その臭いの大本たる残滓は、目の前の男によって余さず舐られ、喉の奥へと消えていった。

「なんて顔してるのさ君」
「ようやく釣り糸に獲物が掛かったんでなァ……悦びの表情だ、覚えておけ」
「釣られたんじゃない、捕まってあげたんだよ。そこ大事だからね?」
「どちらでもいい。ほら、撒き餌だけじゃ足りないだろう」
 シャツのボタンを外し、前を寛げる。暗がりの中で金色が光った。獣が喉を鳴らす。やや乱暴に服を剥がれ、首筋に牙が立てられた。

「ッ、っはぁ……
 いつまで経っても体液を啜られる感覚には慣れそうにない。皮膚を破られ身体に空いた穴を好きにされながら、覚えるのは痛みよりも快感だ。沸き上がる熱が思考をどろどろに溶かしていく。逞しい背に腕を這わせ、もっと吸えとばかりに男を抱き寄せた。

「はは、すっかり夢中だなァ伊達男」
「ハァッ……当然、だろ。こっちは四日ぶりのまともな食事だ。搾り尽くさないよう加減するのもやっとだよ」
「ふん、果たして搾り尽くされるのはどっちだろうなァ」
 右手を滑らせ、主張し始めた男の膨らみを撫でる。少し表面をなぞるだけで体積を増す雄に期待するなという方が無理だ。ああ、早くこの長大な逸物で串刺しにしてほしい。好き勝手に揺さぶって、腹の奥を子種で満たしてほしい。

「もうパンパンだな。よしよし、いっぱい可愛がってやるから少し待ってろ」
 燭台切を嬲るのは左手に一任し、右手で中途半端に開いた奥に触れる。刺激に飢えた後孔は易々と二本の指を呑み込み、異物を肉の襞で締め付けてきた。ぐちゅぐちゅと攪拌するように中を広げ、音を立てて男を誘う。

「ッ!? ひぁあァッ、ゆび、そこ、やあァァ……!」
 慣らしている最中、さらに燭台切の指が足された。俺よりも俺の身体に詳しい男は、内側から容赦なく官能を高め、殊に敏感なしこりを擦ってくる。自分で動かす余裕など無くなって、されるがまま喘ぎ壁に身を預けた。燭台切の指と自分でくわえ込んだ指が共に抜かれる。切なさに震えたのも束の間、ここ数日焦がれ続け、夢にまで見た熱が喪失感もろとも腹の奥を埋めていった。

「ぁ、アあぁあッー! あつ、はああああおっき、きもちいぃ……
「あは、長谷部くんすっご……中きゅんきゅんして僕のことすきすきっていってる」
「うん、すきっ……おまえの顔も、ちんぽもどっちもすきぃ……
「それ以外は?」
「おまえの、つくるめしは、はァっ……! さいこぉ……
「嬉しいけど身体と料理の腕以外で」
「えっと……じゃあ、ぜんぶ」
「雑にまとめられた」
「ひやぁっ! ああッそこ、いいッ! も、ちんぽでつっこむなばかぁ……!」
「君が突っ込まれるようなこと言うからだろ、色んな意味で」

 張り詰めた熱が隘路を我が物顔で突き進む。片脚を担がれてる体勢は不安定極まりなく、何もせずとも自重でより深く雄を受け入れてしまう。壁と燭台切に挟まれ、少し乱暴に扱われるのがたまらなく気持ちいい。腰をぶつけられるたび、俺はあられもない声を出して男の竿にしゃぶりついた。

「ああああ、も、いく、うしろめちゃくちゃにされて、めすいきするぅ……!」
「は、ハァ、ぼくも、わりと、げんかいッ……!」
 動きが激しくなり、繋がった部分から二人分の体液がこぼれ落ちる。
 下生えが肌を撫でるだけでも快感を生んで、もう互いに達することしか頭にない。執拗に突かれた最奥が緩み、仕込まれて日の浅い箇所に燭台切が潜り込んだ。

「! ぁ、ああああああああ!」
 痛覚か快感かも判らないまま叫び、燭台切の背に縋りつく。極まった肉襞が逸物を締め付け、濃厚な精を搾り取った。腸壁に飛沫を叩きつけられ、ただえさえ余韻に震える身体にまた火が点く。

「ぁ、は……はああ……すご、かった」
「ん……こっちも、おちんちんとけるかとおもった……
「とけるどころかもう一戦いけそうなぐらいガチガチじゃないか……頼もしいやつめ」
「どこ見て褒めてるんだい。まだいけるのはそうだけど、長谷部くん辛そうだし、いったん抜くよ?」
「んぁ……

 白濁の糸を引きながら燭台切が俺の中から抜け出る。蓋の役割を果たしていた肉棒が無くなるなり太腿を結構な量の粘液が伝った。
 汗で張り付く服を一枚一枚丁寧に剥がれる。カソックとシャツが床に落ち、露わになった俺の腕には真新しい包帯が巻かれていた。

「血の匂いはしない……もう傷は塞がったみたいだね」
「ああ。言っただろう、放っておいても治るって」
「それでも僕のせいで長谷部くんが傷つくのは嫌なんだ。君を守りたくて昼の仕事にもついていくようにしたのに、これじゃあ格好つかないよ」
「好きなやつを守りたいのは俺も同じだ。噛まれた跡も含め、お前のために負った傷ならそれすら愛おしいさ」
 傷口に添えられた手に己の手を重ねる。

 自分よりも少し大きい掌が、この世の何より頼りになるものだと俺は知ってしまった。こいつは先日の一件を今も悔やんでいるようだが、天敵の太陽すら克服しようする燭台切だからこそ、俺はこうも惹かれて已まないのだろう。
 もう引き返せないほど惚れ込んでいるのに、これで日中の力関係まで逆転したら一方的に甘やかされかねない。ヒトの身では難しかろうと、俺はやはり燭台切とは対等でいたかった。

「はは、君ってヒトは本当に格好いいねえ」
「当然だ。何せ彼氏が世界一の男前だからな、これぐらいでなきゃ釣り合わん」
「はいはい、からかわないの」
「本音だぞ。艶事を除けば俺たちにどっちが上か下かなんて区別は無いだろう。互いの弱点を知ることもパートナーには必要だ。燭台切にとっては受け入れがたい話かもしれないが、苦手なことも格好悪いところも俺には全部、教えてくれ」
「長谷部くん」
「頼む、燭台切」
 下から黄金色の瞳を覗き込む。嘆願が届いたのか、燭台切の男らしい眉が柔らかな曲線を描いた。

「情けないところ沢山見せることになるけど、嫌われないように頑張るね」
「ありがとう燭台切。じゃあまず――

 襟元を掴み、同性として憎たらしいほど長い脚の内側を刈る。
 いかに相手と体格差が有ろうと、油断を突けば横に引き倒すことだって夢ではない。現に燭台切はバランスを崩し、一瞬といえども俺に主導権を譲り渡してしまった。
 大男の体重を両腕で支え、向かう先は浴室である。戸惑う声を無視し、蛇口を捻った。降り注ぐ水流が二人の髪から爪先まで全身をぐっしょりと濡らしていく。

「流れ水にどこまで弱いのか教えてもらおう、実地で」
 含み笑いが止まらない俺に対し、燭台切は打って変わって真顔になっている。それが流れ続けるシャワーのせいなのか、俺の提案に対するものかは定かでないが、多分9:1で前者だろう。
 確かに梅雨の時期は燭台切の来る頻度も少なくなっていた。毎日から二日に一回になった程度の変化だが、この分ではあれも流れ水の影響だったのかもしれない。

「どうやら思ったより効くみたいだな。あれだけ荒ぶっていた息子も心なしか控えめに……それでもでかいな、何だお前」
「いや何だってむしろ僕が訊きたいんだけど。長谷部くんは何がしたいの? 服着たままの僕を浴室に引っ張り込んで、びしょびしょになりながら人様のおちんちん実況するってどういう状況?」
「見たままだ、受け入れろ」
「いや長谷部くんが口に受け入れているのは僕のおちんちんだけど。ン、ちょ、まさか本当にここでする気かい」
「初体験が聖堂だったのに何を今更。あのときだって「仮にも聖職者が神様の前でこんなはしたない姿見せていいの?」とか内心思ってたんだろサドめ」
「思わなくもなかったけど、僕としては二回戦くらいベッドの上で落ち着いてした、ァ、ふ……もうそんな美味しそうに咥えちゃって……

 肉茎の半ばまでを含み、粘膜と舌とで萎えた雄を慈しむ。唾液ぐらいでは流水とみなされないようで、どれだけ吸いついても男の逸物は逞しくなるばかりだった。
 周囲を叩く水音のせいで燭台切の息遣いは聞こえづらいが、頭を撫でる指先が時折反応を見せるので、どこが良いのかどうされたいのかは何となく伝わる。

「ふふ……いいぞ、もっとおおきくなあれ、あむ」
「はあ、いつから君はこんなえっちな子になっちゃったのかな」
「間違いなく、いたいけな身体にメスの快感を教えた悪い大人の影響だろうなァ?」
「二十四にもなって「いたいけな身体」はないだろう。君は始めから愛される素質が有ったよ」

 跪いていた俺の股間に燭台切の膝が割り込む。剥き出しの性器を足で嬲られ、中心から背筋を走る痺れに肩が跳ねた。先ほどは出さずにイったから、男としての欲は消化されずに今も燻ったままだ。布越しとはいえ、俺の中心を濡らしている液体が降りかかる温水でないことに、燭台切も気付いているだろう。

「しょくだいきりぃ……
「いいよ。触ってあげるから立って、あと後ろ向いてね?」

 言われるまま立ち上がり、壁に手を突いた。流水に晒されていた背中に男が覆い被さる。触れ合った箇所が燃えるように熱い。前も後ろも中途半端に昂ぶっている。
 腰を掴む手と割れ目に宛がわれた肉棒に固唾を呑んだのは仕方ないだろう。俺の欲望に完璧に応え、満たしてくれるのは、ただ一人燭台切だけだ。

「ン、あ、あああッ!」
 再び侵入してきた雄に意識の全てを持って行かれる。一度繋がり中に注がれただけあって、いきなり穿たれても俺の身体は易々と男を呑み込んでいった。

「はーッァ、あっだめ、だめなとこ、あたってるからァ……!」
「長谷部くんのダメはイイの同義語だからなあ。ここ突かれるのもダメなんだよね?」
「あァッ! う、だめ、ぜんぶだめェ、うごくのらめら、ぁン!」
「最終的に入ってるのもダメって言われそうだ、ねぇッ」

 水滴が跳ねる。シャワーから流れる水、接合部で泡立つ粘膜、犬のように突き出した舌から零れる唾液、俺たちの身体は色んなもので濡れていた。燭台切の手が前に伸びて、放っておかれた陰茎がやっと本来の機能を果たし始める。

「うぁ、はぁっア、あああ、しょくら、うし、うしろもぉ……
「うんうん、両方してあげるよ。たくさん出して、いっぱい気持ちよくなろう?」
 素より臨界点に近かった俺の性器は我慢汁でどろどろだ。竿まで零れてきた粘膜を掬われ、全体に塗り広げられる。滑りが馴染んだ後は激しく扱かれ、射精まで一気に導かれた。

「あッ、あぁッ! でる、もうでるぅッ!」
「いいよッ……お尻の中かきまわされながら、おちんちんでも上手にイこうね……!」
 奥を一突きされ、両足が突っ張る。後ろの刺激が決定打となって、溜め込んでいた精が勢いよく浴室の壁を汚していった。絶頂を迎え、弛緩する身体を燭台切が支えてくれる。性器から離れた男の手は、また俺の腰に添えられた。腹の中には、極まった肉の締めつけに耐えた男根がどくどくと脈打っている。

「可愛かったよ長谷部くん。じゃあ今度は僕の方に付き合ってもらおうかな」
「ふぇッ……!」
 凶悪に膨れ上がった逸物に幾度も貫かれ、息が詰まった。ばちゅばちゅと下品な音が響く。もう頭の方は馬鹿になっているのに、男の味を覚えた後ろは激しい抽挿に逐一反応を示した。

「ッ、ぁ、はせべ、くんッ――!」
 燭台切が身を震わせ、二度目とは思えぬ量の子種が奥に注がれる。貪欲な肉鞘は男の形にぴったり寄り添い、最後の一滴まで喰らい尽くした。

「は、ァ、はあ……水、浴びっ放しなのに元気そうだな」
「目の前に最高のご馳走があるからね。これくらいなら誤差の範囲だよ」
「規格外め」
「ラブイズパワーだよ。君がいれば僕はどこまでも強くなれるんだ」
「確かに弱体化してるとは思えないちんぽ力だったが」
「いや下半身限定の話じゃなくて、長谷部くんがいれば弱点なんていくらでも克服できるよっていう割と情熱的な告白なんだけど」
「解ってるさ。今日こそは手玉に取ってやるつもりだったんだ、多少の反抗期くらい大目に見ろ」
「十五年続いた反抗期を終えたばかりだと思ったのにスパン短いなあ」
「簡単に終わらせるコツが有るぞ。ヒントは唇」
「それほぼ答えじゃないか」

 繋がったまま少しだけ背後を振り返る。正しく俺の言葉を解した燭台切からは血の味がした。

「そうして盛り上がった結果、ベッドにも行かず浴室で盛っていたら人型になれないほど旦那さんが衰弱して現在蝙蝠姿で療養中と」

 一期一振のまとめに無言で頭を垂れる。

 まさか流れ水にどこまで弱いのかという、名目でしかなかった実験がしっかりと成果までお出しするとは思わないだろう。
 いや言い訳は見苦しい。水も滴る良い男というが、濡れてる燭台切が大変艶っぽくて散々続きをねだったの俺だ。
 休業期間も一週間から二週間に延長である。本当の理由など話せるはずもなく、勘の鋭い宗三を誤魔化すのには骨が折れた。
 自業自得ではあるが、やはり欲望に従ってはろくな結果にならない。今回の反省を元に、当分は堅実かつ健全な性生活を営むとしよう。

「長谷部殿」
「何だ」
「結果はどうあれ仲直りは成功したようで何よりです。貴方に足りていなかったのは素直さだと思いますよ」

 水の精霊が微笑を浮かべる。俗塵に塗れた助言ばかり寄越してきた男ではあったが、その眼差しは足元の湖面と同じくどこまでも透き通っていた。

「久方ぶりにヒトと会えて楽しゅうございました。またいつでも湖にお越し下さい。我ら兄弟は貴方を歓迎いたしますぞ、長谷部国重殿」
「一期」
「友誼の証にこちらの書物を、私と思って大切にしてやって下さい」
「一期……!」

 『獣姦のススメ』
 メジャーなバター犬から玄人好みの竜姦まで完全網羅! ケモナー垂涎の一冊ここに爆誕!

「蝙蝠も一応載っております故、参考程度に」
「一期」
「はい」
「健闘を祈っていてくれ」
「ええ。今後も良いドスケベセックスを」

 視線を交わし、俺たちは今日も人差し指と中指の間に親指を差し入れる。

 そう俺に足りていないのは素直さだった。健全な性生活だと? ふざけるな、我慢も過ぎれば身体に障る。
 燭台切光忠は持って生まれた才覚や能力に奢らず、今日も吸血鬼としての宿業に抗い続けている。あの男なら本当に太陽すら克服する日が来るかもしれない。だが、それが現実になるまでは相棒である俺が男の弱点を補い、支えてやるべきだろう。

 蝙蝠でしかいられないときが有れば、蝙蝠に合わせた愛し方を研究するべきだ。そうこれは恋仲として当然の試みである。決して獣姦に興味が有るとか、蝙蝠状態なら流石にしてやられることはないだろうとか、そんな目論見はこれっぽっちも無いので安心してくれ燭台切。

 行こう。俺と吸血鬼とのドスケベライフはまだ始まったばかりだ――

 なお、本を参考に後日決行した作戦は、返り討ちに遭い失敗に終わったことをここに記述しておく。ちんぽには勝てなかったよ。

 

 

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